Webを生業としてやってれば、「SEO=ほぼGoogle対策」というのは周知の事実だし、アルゴリズムが公開されていない以上、「Googleが掲げる10の事実」だとか、ガイドラインの類には気を配らないといけない。
- ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
- 1つのことをとことん極めてうまくやるのが1番。
- 遅いより速い方がいい。
- ウェブ上の民主主義は機能する。
- 情報を探したくなるのはパソコンの前にいる時だけではない。
- 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
- 世の中にはまだまだ情報があふれている。
- 情報のニーズはすべての国境を超える
- スーツが無くても真剣に仕事はできる
- 「すばらしい」では足りない。
出典:https://www.google.com/about/philosophy.html?hl=ja
Webの世界は、Googleのルールがデファクト・スタンダードになっているのは動かしがたい事実だから、Web制作は基本的にこういったGoogleの方針・ポリシーには従わざるを得ない面も多い。
だが、だからといってそれが「Webのあるべき正しい姿」かどうかは別の話。仕事だからと、何の信念もなしに惰性でただ長いものに巻かれるだけのエンジニアではありたくないので、ちょっとだけツッコんで見る。
「検索サイトはユーザーのためのもの」ってところは完全に同意だし、「スーツがなくても真剣に仕事はできる」なんて素晴らしいじゃないですか。
まあ、Googleの「信念・哲学」でしか無いものを「事実・真実」と言っているのが気に食わないんですよね。
Webに触れている人が全て、リテラシーが高いってわけじゃないですからね。Googleが「事実・真実」と言っちゃうと、それを無条件に受け入れる人が多いだろうから、それは困るってわけで。
この文書が「事実」ではなく「信念・哲学」と謳ってるなら何も文句は言いません。念のため、英語の原文も見てみたけど、”Ten things we know to be true” とあるから、私のつたない英語力でも「事実・真実」と断言してることくらいは分かる。URLは”philosophy”なんだけどね。
「1つのことをとことん極めてうまくやるのが1番。」
たしかに、「No.1」を目指すなら、スペシャリストであるべきなんだろう。けど、それを「事実」と断定されるのはうなずけないし、「スペシャリスト>ゼネラリスト」という考え方には同意できない。別にGoogleの方針として、「人材としてスペシャリストの方が絶対的な評価が上」と言っているわけでは無いと思うが、Googleみたいな支配者がこういうことを「事実」として言い出すと、世間の風潮がそうなりかねない。
スペシャリストかゼネラリストか、なんて個々人の「特徴・適性」でしか無いわけですよ。
だいたい、世の中スペシャリストだけになったらやってけないでしょ。
「遅いより速いほうがいい。」
これもどっちか選べってのなら、速いほうがいい。人間に与えられた時間は有限なわけだし。しかし、だからといって「情報の正確性」を犠牲にして良い理由にはならない。
ただし、ここで言う「正確性」ってのは、いわゆる「フェイクニュース」のような「情報の中身」のことではなく、「情報の出し手」が発信した情報が損なわれないで「情報の受け手」に伝わるかどうか、ってこと。
具体的には、速度を優先するあまりに、過度に「キャッシュ」という「コピーコンテンツ」に頼るのはいかがなものか?ってことです。
「コピーコンテンツ」はGoogleにペナルティーを課される大きな要因だし、そもそもGoogleルール以前に、著作権法がある国であれば、法に触れる行為。しかし、Googleの膨大なデータベースや、ブラウザ内のキャッシュって、紛れもない「コピーコンテンツ」であって、情報の「オリジナル」では無いわけですよ。
情報の発信者には「コピーコンテンツ」とみなせばペナルティーを課すくせに、「情報の仲介者」でしかないGoogle自身が「コピーコンテンツ」に頼るってのはダブルスタンダードもいいところ。
仕事や人間関係でも「言った・言わない」でトラブルになることは多いけど、基本的にはコミュニケーション不足の問題。それがWebの世界では、Googleのせいでコミュニケーションに齟齬が起きる場合もあるわけですよ。オリジナルじゃなくって「キャッシュ」ばかりを見せてると。
速度重視もいいけれど、「情報をありのままの状態で正しく伝える」ということも同じくらい重視してほしいもんです。
「ウェブ上の民主主義は機能する。」
少なくとも、パンダアップデートやらペンギンアップデートやらをやる前の、質が高かろうが低かろうが、被リンクが多いほどサイトの評価が高かった状態を見る限り、「民主主義=多数決」としか見てないよね?
意見の分かれるところだろうけど、多数決って、民主主義の世の中で意思決定をするための手段の一つでしか無いわけですよ。「民主主義=多数決」となるともはや「多数派主義」でしか無いわけで。
「多数に支持されないWebコンテンツは淘汰される」って意味なら分からんでもないが、Web上には決して多数に支持されてるわけではない「フェイク」がはびこってるわけですよ。N●tg●●kあたりの営利目的の確信犯的な「フェイク」垂れ流しサイトとか。
まあ、「民主主義=多数決」「多数派が常に正しい」という訳ではない、という認識に至ったから、悪質な「投票」を排除するためにアルゴリズムの見直しを絶えずやってくれてる、ってことならば何も文句はありませんが。
どっちかって言うと、Webの世界の「フェイク」の多さはGoogleのせいってより、匿名SNSとかリテラシー教育不足に原因があるわけで。
「悪事を働かなくてもお金は稼げる。」
そう言われても、世の中に営利目的のフェイクサイトでお金を稼いでる輩はいる訳で。長くは続かないにしても、そういう輩は、手を変え品を変え、フェイクを垂れ流すという悪事で金を稼ぐよ。
Googleという企業は、日本企業のCSR活動とは比べ物にならない社会貢献をしているようだけど、Googleが出来る一番の社会貢献って、Webの世界からフェイクを無くすための活動じゃないのかと思う。Web上の情報が「真実」かどうかをGoogleに恣意的に判断してもらっても困るんだけど、「真実」かどうかの判断材料を一番たくさん持ってるのはGoogleに違いないだろうから、なにか具体的な手を打てるとしたら、Googleがまず一番手になるわけで。もしくは、「嘘を嘘と見抜く」ためのリテラシー教育への支援や投資ですかね。
もし「嘘を嘘と見抜く能力」がGoogleにとって都合が悪いと言うなら、それは「悪事」に加担してるのと一緒としか思えない。
あと「Google が検索結果のランクに手を加えてパートナー サイトの順位を高めるようなことは絶対にありません。PageRank は、お金で買うことはできません。」という点については、全く信用してません。
根拠があるとしても、Googleにとってそれは「絶対に開示できない機密情報」だろうし、根拠もない(もしくはあったとしても開示できない)ことを断言されても、それは信用出来ないでしょ。
これは私の個人的なポリシーでしか無いのだが、Webの仕事をする上で、とくにSEOにまつわるようなことについて、お客様に対して「絶対」という言葉はそれこそ「絶対」に使いません。
もちろん最大限に努力はしますよ。けど、検索順位を保証するだとか、アクセス数アップを約束してしまうとか、そんなリスキーなことは出来ません。だって、Googleの絶対的な機密情報をただのフリーランスエンジニアが知り得るわけがないんだし。
「技術的な知見を元に出来ること・出来ないことをキチンと切り分け、その上でお客様に対して、最善と思える策を提示する」
これが、エンジニアとしてお客様に信頼してもらうためのあるべき姿だと、個人的には思ってるので、根拠もなしに断言されると、違和感を覚えるわけです。
まあ、Googleのセリフを借りれば、これが私にとっての「極めるべき一つのこと」になるわけですが。
あ、そう取れば「1 つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。」は決してゼネラリスト否定ってことにはならないか。